2019年度(再試験)論文試験・論文対策 総評(まとめ)(一般公開中)

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受験要項(2019年度)※2018年度(平成30年度)と同じ ※2020年度で修正あり

(B)論文試験(100 点満点)
論文試験は、相談内容を分析し、問題点をまとめ、資料を作成する能力を判定するために出題します。このため、「体験談」や「感想文」といった作文ではなく、以下の評価の観点を踏まえ、客観的な事実に基づき論理的に考察した論文である必要があります。

[評価の観点]
・出題の趣旨をよく理解し、テーマに関する要点が適切に記載されているか。
・指定語句をその意味するところが明確になるよう、適切に使用しているか。
・出題に関する知識や能力、問題意識を有しているか。
・広い見地から考察し、適切な結論を下しているか。
・論理に矛盾や飛躍がなく、論旨が明確になっているか。
・消費生活センター・消費生活相談窓口、消費生活相談員の役割を踏まえて消費者問題を考察しているか。
なお、原稿用紙の使い方の不適、誤字・脱字については、減点の対象とします。

※2020年度受験要項で修正
(修正前2019年度要項)・指定語句をその意味するところが明確になるよう、適切に使用しているか。⇒(修正後2020年度要項)・指定語句を、論旨に沿って適切に使用しているか。」

試験問題(2019年度)※平成30年度より修正あり

次の2つのテーマのうち1 つを選び、1,000 字以上1,200 字以内で論文にまとめ、解答用紙に記入しなさい。以下の場合は、採点の対象外となる。
① 「選択式及び正誤式筆記試験」の得点が基準を超えていない場合
② 文字数制限が守られていない場合
※文字数の数え方は、文字が記入されている行ごとに20 字として数える。1行の途中までしか文字が書かれていなくても、20 字として数える。
※1行のうち1文字も記載がない行は、1行(20 字)として数えない。
※1列のうち1文字も記載がない列は、その文字数分を減らして文字数を数える。

③ 受験番号・氏名の記入がない場合、又は正しく記入されていない場合
④ 選択した論文テーマ番号の記入がない場合、又は正しく記入されていない場合

(参考)平成30年度試験 ※一部変更あり(マーカー部分)
次の2つのテーマのうち1 つを選び、1,000 字以上1,200 字以内で論文にまとめ、解答用紙に記入しなさい。以下の場合は、採点の対象外となる。
①「選択式及び正誤式筆記試験」の得点が基準を超えていない場合
②文字数制限が守られていない場合
※文字数の数え方は、文字が記入されている行ごとに20 字として数える。一行の途中までしか文字が書かれていなくても、20 字として数える。
③受験番号・氏名の記入がない場合、もしくは正しく記入されていない場合
④選択した論文テーマ番号の記入がない場合、もしくは正しく記入されていない場合

以下のページでまとめていますので、必ず確認しておいてください。

2019年度(再試験)論文試験問題

【テーマ1】当事者による解決が困難な消費者トラブル

当事者による解決が困難な消費者トラブルにおいて、消費生活センターはどのような対応をとるべきか。相談者の救済・解決とトラブル再発防止を視野に入れて論じなさい。なお、論述に当たっては、以下を踏まえること。

1.以下の指定語句をすべて用いること(順不同)。
2.指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるように、適切に用いること。
3.文章中の指定語句の箇所には、分かるように必ず下線を引くこと。同じ指定語句を複数回用いる場合、下線は1回目の箇所についてのみ引けばよい。
4.消費生活センター・消費生活相談窓口、消費生活相談員等の役割を考慮すること。

指定語句:あっせん、ADR、PIO-NET、行政処分、適格消費者団体

【テーマ2】若者の消費者トラブル

民法の一部を改正する法律(2022 年4月1日施行)に基づく成年年齢引下げに伴い、若者(特に18 歳や19 歳)の消費者トラブルの拡大が危惧されている。若者をめぐる消費者トラブルの特性と今後の対応策について論じなさい。なお、論述に当たっては、以下を踏まえること。

1.以下の指定語句をすべて用いること(順不同)。
2.指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるように、適切に用いること。
3.文章中の指定語句の箇所には、分かるように必ず下線を引くこと。同じ指定語句を複数回用いる場合、下線は1回目の箇所についてのみ引けばよい。
4.消費生活センター・消費生活相談窓口、消費生活相談員等の役割を考慮すること。

指定語句:マルチ取引、SNS、未成年者取消権、消費者教育、契約の意義
※「SNS」:ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略

論文解説・総評

テーマ1は「当事者による解決が困難な消費者トラブル」、テーマ2は「若者の消費者トラブル」と命名しました。

行政問題か法律問題か

この2つに区分するのが賛否が分かれるところですが、勉強部屋では2つに区分しています。

行政問題

  • 行政問題は、政策的なことを論じるもので、さまざまな視点から書くことができ、何でもありになるので書きやすいです。テーマは現場を知らなければ書けないものから、前回と今回のように一般受験生でも書けるものなど、出題年によって難易度が異なります。基本的には現職向けの問題です。
  • 指定語句を見ると、基本的な語句ばかりで、政策的な語句や、一般用語などが入っており、法律的な用語が少ないので判断できると思います。現職は、こちらを選ぶほうが無難です。新試験になってからは、一般の受験生でも対応できる問題になりつつあるようです。
  • 今回のテーマは2つとも行政問題のようですが、両方とも行政問題ということはまずないと思います。そうしたときに、求められていることが現場のことか法律的なことか、という違いと、指定語句に行政的なものが多いか法律的なものが多いかで考えます。すると、テーマ1では「あっせん、ADR、PIO-NET」という3つが非常に現場よりの語句であり、特に「あっせん」は行政問題の頻出語句です。PIO-NETも行政問題で頻出です。「行政処分」についても、平成28年度の行政問題で指定語句になっています。さらに、テーマ1では適用する法律が何かわかりません。そういう意味で法律問題ではないと考えます。
  • ということで、テーマ1は「行政問題」で、「当事者による解決が困難な消費者トラブル」と命名しました。
  • このように、行政問題でありながら、法律問題の要素が含まれるテーマ、もしくはその逆のパターンが増えていますので、見分け方としては、指定語句が行政的なのものか法律的なものか、もう一つのテーマがどちらかを確認してください。

法律問題

  • 法律問題は2つのパターンがあって、1つは法律制定や改正などがあったときに、その概要を論じるもので、純粋な法律問題です。過去問を見ればわかると思います。
  • もう1つは行政問題的な法律問題です。これは、現場で見られる相談事例をあげて具体的に解決方法を具体的な法律を適用させて書くというもので、最近はこのパターンが多くなっています。「送りつけ商法」「次々販売」「ネット通販」などオーソドックスな事例が出題されます。
  • 特徴は指定語句に条文等に出てくるような法律用語が列挙されることです。知らなければ書けないというもので、毎年1つぐらい難易度の高い指定語句があります。また、具体的な解決策として、法律に基づくアドバイスをしていくことになるので、どんな条項を使って解決するのかを示す必要があります。現職が行政問題的に政策的なことを書いてしまって不合格になるパターンが出ています。こちらは、あくまでも法律用語を正確に適用させて解決方法を助言するというのが中心になります。
  • 今回のテーマ2は一見「行政問題」のようですが、テーマ1が行政問題であったこととと、指定語句が法律用語色は少ないですが法律用語であることからテーマ2は法律問題としています。異論があるかもしれませんが、行政問題的に論じすぎると、論点がずれる可能性がありますので気を付けたいところです。特に、民法的な法律用語をきちんと書くことがポイントかなと思います。それを踏まえつつ、まとめや結論で行政問題的な消費者教育につなげていくということになると思います。テーマ1と違って、民法(未成年者契約の取消権)と特定商取引法(マルチ取引)という法律に関連することがわかると思いますので、そういう意味でも法律問題になります。
  • なお、平成29年度試験では「若年者の消費者トラブル」が行政問題でしたが、この2019年度の再試験では「若者の消費者トラブル」として同じような消費者教育のテーマですが法律問題になっています。
  • ということで、テーマ2は「法律問題」で「若者の消費者トラブル」と命名しました。

※平成29年度を「若年者」、2019年度を「若者」と、同じ言葉でも違った表現をしているのは、テーマで使われている言葉が違うからです。指定語句になった時は転記間違いに気を付けないと減点対象になる可能性があるのでご注意ください。

最近の傾向として、行政問題が「法律問題的な行政問題」であったり、法律問題が「行政問題的な法律問題」であったりするので、同じテーマのようでも少し書き方が変わります。ごっちゃになってしまうと論点をはずすことになりますのでお気をつけください。

例年通り、テーマ1は行政問題、テーマ2は法律問題でした

【テーマ1】【テーマ1】当事者による解決が困難な消費者トラブル

当事者による解決が困難な消費者トラブルにおいて、消費生活センターはどのような対応をとるべきか。相談者の救済・解決とトラブル再発防止を視野に入れて論じなさい。なお、論述に当たっては、以下を踏まえること。
指定語句:あっせん、ADR、PIO-NET、行政処分、適格消費者団体

今回のテーマ1は行政問題・難易度は少し難しいです

行政問題であり、論じることも分かりやすいですが、指定語句をうまく使うことがポイントとなっていますので、そこがハードルになっていることもあります。一般受験者には少し難しく、知識不足だと、論点がずれる可能性があるかもしれません。また、現職にも指定語句の使い方が難しいかもしれません。しかし、指定語句を順番通りに使って現場での実務をストーリー化するとそこそこの完成度の論文が仕上がる。この点でいえば、現職には易しく、一般受験生には未知の世界かも。

指定語句からストーリーを作る

指定語句:あっせん、ADR、PIO-NET、行政処分、適格消費者団体

  • 【あっせん】
    相談者の救済・解決のために行う消費生活センターの重要な役割
  • 【ADR】
    裁判外紛争解決。裁判ではなく話し合いで解決しようとする手段で、消費生活センターのあっせんはADR
  • 【PIO-NET】
    相談情報を入力するシステムで全国で情報共有している
  • 【行政処分】
    国や国民生活センターによるPIO-NETの分析により悪質な事業者を行政処分するきっかけにもなる
  • 【適格消費者団体】
    一方、消費者契約法をはじめとする消費者団体訴訟により被害の拡大防止・再発防止につながる

【テーマ2】若者の消費者トラブル

民法の一部を改正する法律(2022 年4月1日施行)に基づく成年年齢引下げに伴い、若者(特に18 歳や19 歳)の消費者トラブルの拡大が危惧されている。若者をめぐる消費者トラブルの特性と今後の対応策について論じなさい。なお、論述に当たっては、以下を踏まえること。
指定語句:マルチ取引、SNS、未成年者取消権、消費者教育、契約の意義
※「SNS」:ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略

今回のテーマ2は法律問題

指定語句にもある消費者教育がメインの行政問題のように見えて、民法が中心の法律問題。後半やまとめに、消費者教育の重要性を行政問題的に論じればよいので、行政問題の要素が入った法律問題

若者の消費者教育は頻出テーマ・難易度は少し難し目

指定語句の使い方や民法をどのように展開していくのかが少し難し目

指定語句からストーリーを作る

指定語句:マルチ取引、SNS、未成年者取消権、消費者教育、契約の意義

  • 【マルチ取引】
    若者に多い消費者トラブルの1つで、友人関係を利用して拡大する。。成年年齢の引下げに伴い、ターゲット層も広がり、さらなる被害の拡大が懸念される
  • 【SNS】
    SNS時代を生きている若者であるが、SNSをきかっけとしてトラブルに巻き込まれることがある
  • 【未成年者取消権】
    民法改正による成年年齢引下げで未成年者取消権が18歳・19歳には適用されなくなる
  • 【消費者教育】
    18歳といえば高校3年生。学校教育をはじめとした消費者教育が重要
  • 【契約の意義】
    特に、契約とは何かという基本的なことを知っておく必要がある。契約責任