2021年度 問題1①~④ 消費者行政と関連法(正誤○×)その2(一般公開)

1. 次の各文章が、正しければ○、誤っていれば×を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。

① 消費者基本法においては、「消費者の権利の尊重」と「消費者の自立支援」を基本理念とした消費者政策の基本となる事項が定められており、国は、国際的な連携の確保、環境の保全への配慮、消費者団体の自主的な活動の促進等の施策を講ずるものとされている。

② 消費者基本法では、事業者の責務として、消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供することは規定されているが、消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮することは定められていない。

③ 消費者基本法では、国及び都道府県は、専門的知見に基づき、事業者と消費者間に生じた商品・役務に関する苦情を適切かつ迅速に処理するため、人材の確保を図るよう努めなければならない旨規定されているが、人材の資質の向上その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない旨は規定されていない。

④ 消費者庁が消費者行政の司令塔としての役割を担うためには、消費者事故に関する情報を一元的に集約する必要があるため、消費者安全法では、行政機関、地方公共団体及び国民生活センターの長は、重大事故等が発生した旨の情報を得たときは、直ちに、内閣総理大臣に対し、その旨及び当該重大事故等の概要等を通知しなければならないとされている。

問題1① 消費者基本法(第1条・目的、第21・22・26条・施策)B ※一般常識で対応可能

① 消費者基本法においては、「消費者の権利の尊重」と「消費者の自立支援」を基本理念とした消費者政策の基本となる事項が定められており、国は、国際的な連携の確保、環境の保全への配慮、消費者団体の自主的な活動の促進等の施策を講ずるものとされている。

  • 前半の「消費者の権利の尊重」と「消費者の自立支援」は有名なフレーズです。
  • 後半は2020年度試験と似たパターンです。2020年度は基本的施策の第11・12・15・16条があげられていました。
  • 消費者基本法の国の基本的施策は、第2条の「基本理念(消費者の権利など)」を具体化するものとして、「第二章 基本的施策」として第11条から第23条まで13施策があげられています。この中から2つあげられています。
  • また、「消費者団体の自主的な活動の促進」は「第二章 基本的施策」ではなく「第三章 行政機関等」の3つの中の1つに出てきています。少し悩むかもしれませんが、素直に正しいと考えてください。
  • なかなか暗記できないですが、無理に暗記する必要はありません。常識的に考えればおおむねわかると思います。
  • 蛇足ですが、最後の「消費者団体の自主的な活動の促進等」の「等」は、問題文で列挙された3項目以外の項目もあるという「等」の意味になります。

したがって、問題1①は○(正しい文章)です。このような分かりやすい基本施策の列挙パターンに誤りは入れずらいと思います。

消費者基本法の「第二章 基本的施策」13個と「第三章 行政機関等」3個の条文の表題を列挙

暗記は難しいので、問題文に出てきた時に、正誤がイメージできるようにしてください。
第二章 基本的施策
第十一条(安全の確保)
第十二条(消費者契約の適正化等)
第十三条(計量の適正化)
第十四条(規格の適正化)
第十五条(広告その他の表示の適正化等)
第十六条(公正自由な競争の促進等)
第十七条(啓発活動及び教育の推進)
第十八条(意見の反映及び透明性の確保)
第十九条(苦情処理及び紛争解決の促進)
第二十条(高度情報通信社会の進展への的確な対応)
第二十一条(国際的な連携の確保)
第二十二条(環境の保全への配慮)
第二十三条(試験、検査等の施設の整備等)
第三章 行政機関等
第二十四条(行政組織の整備及び行政運営の改善)
第二十五条(国民生活センターの役割)
第二十六条(消費者団体の自主的な活動の促進)

  • 2020年度試験で列挙されたのは「消費者安全の確保、消費者契約の適正化、広告その他の表示の適正化、公正自由な競争の促進」

消費者基本法
(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務等を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進を図り、もつて国民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的とする。
(基本理念)
第二条 消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者政策」という。)の推進は、国民の消費生活における基本的な需要が満たされ、その健全な生活環境が確保される中で、消費者の安全が確保され、商品及び役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映され、並びに消費者に被害が生じた場合には適切かつ迅速に救済されることが消費者の権利であることを尊重するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として行われなければならない。
2 消費者の自立の支援に当たつては、消費者の安全の確保等に関して事業者による適正な事業活動の確保が図られるとともに、消費者の年齢その他の特性に配慮されなければならない。
3 消費者政策の推進は、高度情報通信社会の進展に的確に対応することに配慮して行われなければならない。
4 消費者政策の推進は、消費生活における国際化の進展にかんがみ、国際的な連携を確保しつつ行われなければならない。
5 消費者政策の推進は、環境の保全に配慮して行われなければならない。

第二章 基本的施策
(国際的な連携の確保)
第二十一条 国は、消費生活における国際化の進展に的確に対応するため、国民の消費生活における安全及び消費者と事業者との間の適正な取引の確保、苦情処理及び紛争解決の促進等に当たつて国際的な連携を確保する等必要な施策を講ずるものとする。
(環境の保全への配慮)
第二十二条 国は、商品又は役務の品質等に関する広告その他の表示の適正化等、消費者に対する啓発活動及び教育の推進等に当たつて環境の保全に配慮するために必要な施策を講ずるものとする。

第三章 行政機関等
(消費者団体の自主的な活動の促進)
第二十六条 国は、国民の消費生活の安定及び向上を図るため、消費者団体の健全かつ自主的な活動が促進されるよう必要な施策を講ずるものとする。

ハンドブック消費者 8ページ 2.「消費者の権利」と基本的施策との関係

問題1② 消費者基本法(第5条・事業者の責務)A ※ラッキー問題

② 消費者基本法では、事業者の責務として、消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供することは規定されているが、消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮することは定められていない。

  • 消費者基本法で頻出の「事業者の責務」です。
  • 暗記するまでもなく常識で正解できるラッキー問題です。
  • 一般の資格試験は誰でも正解できるようなラッキー問題があるのですが、相談員試験はラッキー問題が少ないように思います。

したがって、問題1②は×(誤っている文章)です。

消費者基本法
(事業者の責務等)
第五条 事業者は、第二条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にかんがみ、その供給する商品及び役務について、次に掲げる責務を有する。
一 消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること。
二 消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
三 消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること。
四 消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理すること。
五 国又は地方公共団体が実施する消費者政策に協力すること。
2 事業者は、その供給する商品及び役務に関し環境の保全に配慮するとともに、当該商品及び役務について品質等を向上させ、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成すること等により消費者の信頼を確保するよう努めなければならない。

問題1③ 消費者基本法(第19条・苦情処理及び紛争解決の促進)A ※ラッキー問題

③ 消費者基本法では、国及び都道府県は、専門的知見に基づき、事業者と消費者間に生じた商品・役務に関する苦情を適切かつ迅速に処理するため、人材の確保を図るよう努めなければならない旨規定されているが、人材の資質の向上その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない旨は規定されていない。

  • 消費者基本法の行政の役割で(苦情処理及び紛争解決の促進)ですが、問題1②と同じく常識で正解できるラッキー問題です。
  • この条文とほぼ同じ規定が消費者保護基本法にもあって、これらが行政が消費生活相談事業を実施する根拠法令になっていました。
  • 今は消費者安全法にも規定されたので2本立てになりました。
  • 論文試験や2次面接試験での、「行政が消費生活相談をする根拠は」という問いの原点になります。

したがって、問題1③は×(誤っている文章)です。

消費者基本法
(苦情処理及び紛争解決の促進)
第十九条 地方公共団体は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた苦情が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に処理されるようにするため、苦情の処理のあつせん等に努めなければならない。この場合において、都道府県は、市町村(特別区を含む。)との連携を図りつつ、主として高度の専門性又は広域の見地への配慮を必要とする苦情の処理のあつせん等を行うものとするとともに、多様な苦情に柔軟かつ弾力的に対応するよう努めなければならない。
2 国及び都道府県は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた苦情が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に処理されるようにするため、人材の確保及び資質の向上その他の必要な施策(都道府県にあつては、前項に規定するものを除く。)を講ずるよう努めなければならない。
3 国及び都道府県は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた紛争が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に解決されるようにするために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

問題1④ 消費者安全法(第12条第1項・重大事故の通知)BC

④ 消費者庁が消費者行政の司令塔としての役割を担うためには、消費者事故に関する情報を一元的に集約する必要があるため、消費者安全法では、行政機関、地方公共団体及び国民生活センターの長は、重大事故等が発生した旨の情報を得たときは、直ちに、内閣総理大臣に対し、その旨及び当該重大事故等の概要等を通知しなければならないとされている。

  • 消費者安全法の目玉でもあり、頻出論点の「重大事故の通知制度」です。
  • 細かい引っ掛けに注意してください。
  • 例えば、「直ちに」を「速やかに」などと引っ掛けるなど、通知制度は通知期限が微妙に違っています。
  • 第12条第1項の重大事故は「直ちに」(情報入手時から数時間以内)、第2項の重大事故のおそれがあるのものは「速やかに」となっています。
  • 前半の「消費者庁が消費者行政の司令塔としての役割を担うためには、消費者事故に関する情報を一元的に集約する必要がある」は、論文でもよく使う「司令塔」の役割であり、消費者安全法のポイントでもあります。論文試験でも使うフレーズです。

したがって、問題1④は○(正しい文章)です。

消費者安全法
(消費者事故等の発生に関する情報の通知)
第十二条 行政機関の長、都道府県知事、市町村長及び国民生活センターの長は、重大事故等が発生した旨の情報を得たときは、直ちに、内閣総理大臣に対し、内閣府令で定めるところにより、その旨及び当該重大事故等の概要その他内閣府令で定める事項を通知しなければならない。
2 行政機関の長、都道府県知事、市町村長及び国民生活センターの長は、消費者事故等(重大事故等を除く。)が発生した旨の情報を得た場合であって、当該消費者事故等の態様、当該消費者事故等に係る商品等又は役務の特性その他当該消費者事故等に関する状況に照らし、当該消費者事故等による被害が拡大し、又は当該消費者事故等と同種若しくは類似の消費者事故等が発生するおそれがあると認めるときは、内閣総理大臣に対し、内閣府令で定めるところにより、当該消費者事故等が発生した旨及び当該消費者事故等の概要その他内閣府令で定める事項を通知するものとする。
3 (以下省略)

消費者安全法施行規則
(情報の通知)
第九条 法第十二条第一項の通知は、電話、ファクシミリ装置を用いて送信する方法その他消費者庁長官が適当と認める方法によって行うものとする。ただし、電話によって行った場合は、速やかにその内容を書面、ファクシミリ装置を用いて送信する方法その他消費者庁長官が適当と認める方法で提出し、又は第八項に規定する措置を講じなければならない。
2 法第十二条第一項の内閣府令で定める事項は、重大事故等が発生した日時及び場所、当該重大事故等が発生した旨の情報を得た日時及び方法、当該重大事故等の態様、当該重大事故等の原因となった商品等又は役務を特定するために必要な事項並びに被害の状況(被害が生じた重大事故等の場合に限る。)とする。
3 法第十二条第二項の通知は、書面、ファクシミリ装置を用いて送信する方法その他消費者庁長官が適当と認める方法によって速やかに行うものとする。
4 (以下省略)

【正答】
①→〇、②→×、③→×、④→〇