2023年度 問題1⑥~⑨ 消費者行政と関連法(正誤○×)その4(一般公開)

2023年度試験…消費者行政と関連法 (消費者基本法3・消費者教育2・消費者安全法4)9問

1. 次の各文章が、正しければ○、誤っていれば×を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。

⑥ 消費者安全法における「消費者事故等」には、財産被害に関するものは含まれない。

⑦ 消費者安全法では、都道府県は、同法の要件を満たす消費生活センターを設置しなければならないが、市町村は、必要に応じ、同法の要件を満たす消費生活センターを設置するよう努めなければならないとされている。

⑧ 消費者安全法では、「消費者安全確保地域協議会」の構成員に、病院や教育機関を加えることはできない。

⑨ 消費者安全法では、消費者安全調査委員会は、「生命身体事故等」に関し他の行政機関が行った調査等の結果について、事故等原因を究明しているかどうかの評価を行うことはできないとされている。

問題1⑥ 消費者安全法(第2条第5項・消費者事故等の定義)AB

⑥ 消費者安全法における「消費者事故等」には、財産被害に関するものは含まれない。

  • 少しでも消費者安全法の消費者事故について勉強したことがあれば非常に易しい問題です。
  • 一般的には事故といえばケガをするということをイメージしがちですが、消費者事故等の「等」は、ケガ(おそれを含む)だけでなく、消費者が財産の被害にあった場合も含まれるということになっています。消費者行政ならではの表現かもしれません。
  • 条文では第2条第5項の定義に3つあり、①身体被害があったもの②身体被害が発生するおそれがあるもの③財産被害に関するもの、となっています。③財産被害は条文ではその文言は出てきていませんが「財産被害」と称されています。
  • ちなみに、財産被害といっても、泥棒にあったとかいうのではなく、いわゆる事業者との契約等のトラブルによる消費者被害に関連する財産被害のことを指します。具体的には消費者安全法第2条第5項・消費者安全法施行令第3条に列挙されています。
  • 試験に出題される事故の定義としては消費者事故等の先として「重大事故」があります。重大事故の方が頻出ではあります。※①②関連
  • ちなみに、財産被害のうち、「多数の消費者の財産に被害を生じ、又は生じさせるおそれのあるもの」を「多数消費者財産被害事態」としています。※③関連。

したがって、問題1⑥は×(誤っている文章)です。

消費者安全法
(定義)
第二条 
5 この法律において「消費者事故等」とは、次に掲げる事故又は事態をいう。
一 事業者がその事業として供給する商品若しくは製品、事業者がその事業のために提供し若しくは利用に供する物品、施設若しくは工作物又は事業者がその事業として若しくはその事業のために提供する役務の消費者による使用等に伴い生じた事故であって、消費者の生命又は身体について政令で定める程度の被害が発生したもの(その事故に係る商品等又は役務が消費安全性を欠くことにより生じたものでないことが明らかであるものを除く。)
二 消費安全性を欠く商品等又は役務の消費者による使用等が行われた事態であって、前号に掲げる事故が発生するおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するもの
三 前二号に掲げるもののほか、虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為であって政令で定めるものが事業者により行われた事態

8 この法律において「多数消費者財産被害事態」とは、第五項第三号に掲げる事態のうち、同号に定める行為に係る取引であって次の各号のいずれかに該当するものが事業者により行われることにより、多数の消費者の財産に被害を生じ、又は生じさせるおそれのあるものをいう。
一 消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、事業者が消費者に対して示す商品、役務、権利その他の取引の対象となるものの内容又は取引条件が実際のものと著しく異なるもの
二 前号に掲げる取引のほか、消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、政令で定めるもの

  • 消費者安全法第2条第5項第3号に規定されている「政令で定めるもの」が消費者安全法施行令第3条に具体的に書かれています。特に呼ぶ必要はありませんが、興味のある方は読んでみるのもいいかもしれません

消費者安全法施行令
(消費者の利益を不当に害する等のおそれがある行為)
第三条 法第二条第五項第三号の政令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
一 商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告又は表示をすること。
二 消費者との間の契約(事業として締結するものに限る。以下この条において同じ。)に関し、その締結について消費者を勧誘するに際して、又は消費者による当該契約の申込みの撤回、解除若しくは解約を妨げるため、次のイからニまでのいずれかに該当する行為をすること。
イ 当該契約に関する事項であって、消費者の当該契約を締結するかどうか又は当該契約の解除若しくは解約をするかどうかについての判断に通常影響を及ぼすものについて、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げること。
ロ 当該契約の目的となる商品、製品、役務、権利その他のものに関し、将来におけるその価額、将来において消費者が受け取る金額、その使用等により将来において生ずる効用その他の事項であって将来における変動が不確実なものについて断定的判断を提供すること。
ハ 消費者が事業者に対し、消費者の住居又は消費者が業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
ニ 消費者が事業者に対し、当該契約の締結について勧誘し、又は消費者が当該契約の申込みの撤回、解除若しくは解約をしようとしている場所から退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から消費者を退去させないこと。
三 前号に掲げるもののほか、消費者との間の契約の締結若しくは履行又は消費者による当該契約の申込みの撤回、解除若しくは解約に関し、消費者を欺き、又は威迫して困惑させること。
四 次のイ又はロのいずれかに該当する契約を締結し、又は当該契約の締結について消費者を勧誘すること。
イ 消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第四条第一項から第四項までの規定その他の消費者と事業者との間の契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しに関する法律の規定であって消費者の利益の保護に係るものとして内閣府令で定めるものによって消費者が当該契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとされる契約
ロ 消費者契約法第八条第一項若しくは第三項又は第八条の二から第十条までの規定その他の消費者と事業者との間の契約の条項の効力に関する法律の規定であって消費者の利益の保護に係るものとして内閣府令で定めるものによって無効とされる契約の条項を含む契約
五 消費者との間の契約に基づく債務又は当該契約の解除若しくは解約によって生ずる債務の全部又は一部の履行を正当な理由なく、拒否し、又は著しく遅延させること。
六 不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第四条の規定に違反して景品類を提供すること。
七 前各号に掲げるもののほか、消費者との間の契約の締結若しくは履行又は消費者による当該契約の申込みの撤回、解除若しくは解約に係る事業者の行為の規制に関する法律の規定であって、消費者の利益の保護に係るものとして内閣府令で定めるものに違反する行為をすること。

問題1⑦ 消費者安全法(第10条・消費生活センターの設置)A

⑦ 消費者安全法では、都道府県は、同法の要件を満たす消費生活センターを設置しなければならないが、市町村は、必要に応じ、同法の要件を満たす消費生活センターを設置するよう努めなければならないとされている。

  • 消費生活センターの設置義務についての基本問題です。
  • 都道府県は義務、市町村は努力義務。鉄板フレーズ。
  • 実際問題として、都道府県というのは47都道府県であり、数は限られてますので設置は簡単だと思いますが、市町村は小さいところもあれば大きいところもありますし、人材や予算がたくさんあるところもあれば、少ないところもありますので、市町村すべてを義務にすると基準を満たす消費生活センターを設置することは難しいということで努力義務になっています。ただし、消費生活センターの基準を満たしてはいないですが、相談窓口としての機能については全ての市町村(100%)で対応できるようになっています。

したがって、問題1⑦は○(正しい文章)です。

消費者安全法
(消費生活センターの設置)
第十条 都道府県は、第八条第一項各号に掲げる事務を行うため、次に掲げる要件に該当する施設又は機関を設置しなければならない。
一 消費生活相談員を第八条第一項第二号イ及びロに掲げる事務に従事させるものであること。
二 第八条第一項各号に掲げる事務の効率的な実施のために適切な電子情報処理組織その他の設備を備えているものであること。
三 その他第八条第一項各号に掲げる事務を適切に行うために必要なものとして政令で定める基準に適合するものであること。
2 市町村は、必要に応じ、第八条第二項各号に掲げる事務を行うため、次に掲げる要件に該当する施設又は機関を設置するよう努めなければならない。
一 消費生活相談員を第八条第二項第一号及び第二号に掲げる事務に従事させるものであること。
二 第八条第二項各号に掲げる事務の効率的な実施のために適切な電子情報処理組織その他の設備を備えているものであること。
三 その他第八条第二項各号に掲げる事務を適切に行うために必要なものとして政令で定める基準に適合するものであること。
3 前項の規定により同項の施設又は機関を設置する市町村以外の市町村は、第八条第二項第一号及び第二号に掲げる事務に従事させるため、消費生活相談員を置くよう努めなければならない。

問題1⑧ 消費者安全法(第11条の3・消費者安全確保地域協議会・構成員)A

⑧ 消費者安全法では、「消費者安全確保地域協議会」の構成員に、病院や教育機関を加えることはできない。

  • 「消費者安全確保地域協議会」は、いわゆる「見守りネットワーク」と呼ばれています。論文問題では超頻出であり、指定語句を説明する時に、「病院や学校等の関係機関と連携して」というフレーズは自然に出てくるぐらいになる必要があります。
  • そもそも「加えることはできない」という強い否定の言葉は誤りの可能性が高いパターンです。

したがって、問題1⑧は×(誤っている文章)です。

消費者安全法
(消費者安全確保地域協議会)
第十一条の三 国及び地方公共団体の機関であって、消費者の利益の擁護及び増進に関連する分野の事務に従事するもの(以下この条において「関係機関」という。)は、当該地方公共団体の区域における消費者安全の確保のための取組を効果的かつ円滑に行うため、関係機関により構成される消費者安全確保地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。
2 前項の規定により協議会を組織する関係機関は、必要があると認めるときは、病院、教育機関、第十一条の七第一項の消費生活協力団体又は消費生活協力員その他の関係者を構成員として加えることができる。

問題1⑨ 消費者安全法(第16条第3項・消費者安全調査委員会・他の行政機関等による調査等の評価)BC

⑨ 消費者安全法では、消費者安全調査委員会は、「生命身体事故等」に関し他の行政機関が行った調査等の結果について、事故等原因を究明しているかどうかの評価を行うことはできないとされている。

  • 消費者安全調査委員会(略称・消費者事故調)は、なかなか勉強しにくい分かりにくい分野になります。試験問題でも、たまに出題されます。そんなに難しい問題ではないですが、難易度は少し高めに想定しています。
  • ポイントとしては「①消費者庁に設置されている②生命身体事故等について自ら調査を行う③生命身体事故等についての他の行政機関等による調査の評価を行う④独立して職権を行う」。
  • 今回の問題はそのポイントの1つになりますが、様々なことをしなければならない消費者事故に対する対応について、「評価を行うことはできない」という完全否定は誤りの可能性が高いというパターンです。
  • ちなみに、「生命身体事故等」は第2条第5項の「消費者事故等」の3つの定義「①身体被害があったもの②身体被害が発生するおそれがあるもの③財産被害に関するもの」のうちの①②となっています。

したがって、問題1⑨は×(誤っている文章)です。

消費者安全法
(調査委員会の設置)
第十五条 消費者庁に、消費者安全調査委員会(以下「調査委員会」という。)を置く。
(所掌事務)
第十六条 調査委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 生命身体事故等(運輸安全委員会設置法(昭和四十八年法律第百十三号)第二条第二項に規定する航空事故等、同条第四項に規定する鉄道事故等及び同条第六項に規定する船舶事故等を除く。第四号及び第三十三条を除き、以下同じ。)の原因及び生命身体事故等による被害の原因(以下「事故等原因」と総称する。)を究明するための調査(以下「事故等原因調査」という。)を行うこと。
二 生命身体事故等について、他の行政機関(運輸安全委員会を除く。)による調査若しくは検査又は法律(法律に基づく命令を含む。以下この条において同じ。)の規定による地方公共団体の調査若しくは検査(法律の規定によりこれらの調査又は検査の全部又は一部を行うこととされている他の者がある場合においては、その者が行う調査又は検査を含む。以下「他の行政機関等による調査等」という。)の結果について事故等原因を究明しているかどうかについて評価(以下単に「評価」という。)を行うこと。
三 事故等原因調査又は他の行政機関等による調査等の結果の評価(以下「事故等原因調査等」という。)の結果に基づき、生命身体事故等による被害の拡大又は当該生命身体事故等と同種若しくは類似の生命身体事故等の発生の防止のため講ずべき施策又は措置について内閣総理大臣に対し勧告すること。
四 生命身体事故等による被害の拡大又は当該生命身体事故等と同種若しくは類似の生命身体事故等の発生の防止のため講ずべき施策又は措置について内閣総理大臣又は関係行政機関の長に意見を述べること。
五 前各号に掲げる事務を行うために必要な基礎的な調査及び研究を行うこと。
六 前各号に掲げるもののほか、法律に基づき調査委員会に属させられた事務
(職権の行使)
第十七条 調査委員会の委員は、独立してその職権を行う。

【正答】
⑥→×、⑦→〇、⑧→×、⑨→×