解説の中に出てくる「改正民法」は、2020年4月1日の債権法の大改正のことを指します。わかりやすい表現にしたのと、今まで明文化されていなかった判例などを明文化したことが特徴です。
10.次の文章のうち、下線部が2ヵ所*とも正しい場合は○を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄にマークしなさい。
*誤っている箇所がある場合は、1ヵ所である。
※以下は、民法に関する問題である。
① 民法等の私法上の規定には、強行規定と任意規定がある。例えば、民法第5条第2項は、未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為は、原則として取り消すことができると定めるが、この規定は㋐強行規定である。民法の任意規定と当事者の意思表示が異なる場合には、㋑当事者の意思表示が優先される。
② 詐欺による意思表示の取消しは、取消しの意思表示前に利害関係を有するに至った善意無過失の第三者に㋐対抗することができない。不動産売買契約において第三者が買主に対して詐欺を行った場合において、その事実を売主が容易に知ることができたのに気付かなかったときは、買主は、当該不動産売買契約を㋑取り消すことができる。
③ 代理権が消滅したにもかかわらず、代理人であった者が手もとにある代理権授与の委任状を利用して、消滅した代理権の範囲内で契約を締結した場合、代理権を与えた本人は、代理権が消滅したことを過失なく知らなかった相手方に対して責任を㋐負わない。無権代理行為を本人が追認した場合、その効力は、㋑契約の時にさかのぼって生ずる。
④ 2024(令和6)年1月に、返済期限を同年6月末日と定めて、友人に金銭を貸し付けたが、その期限を過ぎても返済してもらえない状態が続いた。このとき、貸主が、㋐返済期限が到来してから5年間請求しなかったときは、借主は、時効を援用して債権の消滅を主張することができる。なお、時効が完成する前に借主が全額返済せずに一部だけ返済をした場合、借主による債務の承認にあたり、時効は㋑その時から新たにその進行を始める。
⑤ 倉庫に保管している中古バイクの売買契約締結後、引渡日の前に地震が起こり、倉庫の倒壊により当該バイクが破損して、これを引き渡すことができなくなった場合、買主は㋐代金を支払わなくてよい。また、買主が引渡日に中古バイクを受取りに行かず、その後に地震が起きたために当該バイクを引き渡すことができなくなった場合、買主は㋑代金を支払わなくてよい。
解説・ポイント ※問題9を参照してください※
- 民法では2つの大問題が出題されています。問題形式としては最初に「正誤問題」と2問目に「穴埋問題」でしたが、「穴埋問題」の形式がなくなったことから、「正誤問題」しかも、「正誤×選択」という難しい形式になりました。また、穴埋め問題ではテーマが1つに絞られていましたが正誤問題になったことから別々の単独の5問の正誤問題になっています。2024年度以降も1つが10問程度の正誤○×問題、もう1つが5問の正誤×選択問題の15点分になっています。
- 今回の「正誤×選択」問題の特徴としては、民法でも複数の条文がミックスされて問題になっていることが多いということです。問題9が基本的に1つの条文からの出題だったのに対し、問題10は難易度が高くなっているということです。
2024年度 難易度(A易、B普通、C難)目標:3問以上/5問中
- 問題10① 強行規定と任意規定 AB
- 問題10② 詐欺による取り消し(第96条)BC
- 問題10③ 表見代理(第109条・第116条)BC
- 問題10④ 消滅時効(第166条・第152条)C
- 問題10⑤ 危険負担(第536条・第537条)BC
【(参考)2024年度 問題9 民法(正誤○×)難易度(A易、B普通、C難)目標:6問以上/10問中】
- 問題9① 未成年者契約・取消し・原状回復義務(第5条・第121条の2)B
- 問題9② 契約自由の原則(第521条)と放送法(第64条)の受信契約との関係 B
- 問題9③ 錯誤取り消し(第95条)BC
- 問題9④ 未成年者契約(第120条)追認(第125条)BC
- 問題9⑤ 債権譲渡(第467条)BC
- 問題9⑥ 同時履行の抗弁(第533条)AB
- 問題9⑦ 債務不履行(第542条・解除・催告)B
- 問題9⑧ 契約不適合責任(第562条)C
- 問題9⑨ 賃貸借契約(第606条・修繕)B
- 問題9⑩ 委任契約・成果等に対する報酬・648条の2 C
過去問(2023年度試験以降の分)※正誤×選択問題の分※
2023年度 難易度(A易、B普通、C難)目標:3問以上/5問中
- 問題10① 法定後見・任意後見(民法第7条)C
- 問題10② 未成年者契約・取消し(第5条・第120条・第818条)B
- 問題10③ 契約自由の原則(第521条・第522条)B
- 問題10④ 双務契約・債務不履行・同時履行の抗弁(第533条)C
- 問題10⑤ 原状回復・最高裁判例(第121条の2・第708条)B
過去問(新試験以降の分)※穴埋問題の分※
- 2022年度(令和4年度)問題10 成年後見制度 ※難易度(A易、B普通、C難)目標:4問以上/5問
- 2021年度(令和3年度)問題11 錯誤取消し ※難易度(A易、B普通、C難)目標:3問以上/5問中
- 2020年度(令和2年度)問題12 時効 ※難易度(A易、B普通、C難)目標:1-3問以上/5問中
- 2019年度(令和元年度)本試験 問題12 代理 ※難易度(A易、B普通、C難)目標:4問以上/5問中
- 2019年度(令和元年度)再試験 問題12 成年後見制度 ※難易度(A易、B普通、C難)目標:4問以上/5問中
- 2018年度(平成30年度)問題12 民法(取消し・解除)※難易度(A易、B普通、C難)目標:3問以上/5問中
- 2017年度(平成29年度)問題12 民法(建物賃貸借契約)※難易度(A易、B普通、C難)目標:4問以上/5問中
- 2016年度(平成28年度)問題13 民法(無効・取消し)※難易度(A易、B普通、C難) A 目標:5問/5問中