二次試験の事例問題で、クーリングオフ適用除外商品が出てくるという地雷に備えて簡単に復習しておきます。
訪問販売で高級味噌を購入したが、使いきれそうにもないので返品(クーリングオフ)したいと消費生活センターに相談がありました。相談員として、どう対応しますか?
繁華街を歩いていたら、映画のアンケートに答えてほしいと呼び止められ、映画のチケットを割引で買える会員権を3000円で購入した。割引が使える施設や曜日が限定されていて使えそうにもないので返品(クーリングオフ)したいと消費生活センターに相談がありました。相談員として、どう対応しますか?
- 1. 【最初にまとめ】適用除外(特定商取引法第26条)の全体像
- 1.1. クーリングオフの適用に関する補足
- 2. クーリングオフ適用除外の商品(特定商取引法第26条第5項)
- 2.1. 【第1号】消耗品(使用により著しく価額が減少するもの)(政令指定)※契約書面に「使用した場合はクーリングオフできない」と記載がある場合のみ
- 2.2. 【第2号】生鮮食料品等の極めて短期間で商品価値が減少するもの ※政令指定商品なし(御用聞きや3000円未満が多いため)
- 2.3. 【第3号】3000円未満(税込)の現金取引(金額は政令指定)
- 3. (参考)法律 ※長い条文なので引用していません
- 4. (参考)適用除外に関する主な法律
【最初にまとめ】適用除外(特定商取引法第26条)の全体像
- 【第1項】
特定商取引法の適用自体が除外(除外対象は「訪問販売」「通信販売」「電話勧誘販売」)
【第1号】営業としての取引、【第2号】海外在住者との取引、【第3号】国・地方公共団体との取引、【第4号】団体の構成員のと取引、【第5号】従業員向けの取引、【第6号】一般商業紙以外の新聞、【第7号・第8号】弁護士法など、ほかの法律で消費者保護の規定があるとされている法律(ただし、クーリングオフ制度がないなど、各法律の方が優れているというものではない)※対象となる法律は、その他に施行令第五条別表第二を参照(多い) - 【第2項】
省略 - 【第3項】
即時提供が原則・慣例である役務提供(政令指定…①海上タクシー等による輸送②飲食の提供③マッサージ等の施術④カラオケボックス等の利用)(除外対象は「訪問販売」「電話勧誘販売」) - 【第4項】
速やかな提供が必要なもの(除外対象は「訪問販売」「電話勧誘販売」)
【第1号】事前交渉が長期間にわたる商品・役務(指令指定で自動車など)、【第2号】速やかに提供しないと著しく利益を損なう役務(政令指定で電気・ガス・葬式等) - 【第5項】
クーリングオフの適用除外商品(消耗品・生鮮食品・3000円未満の現金取引) (除外対象は「訪問販売」「電話勧誘販売」)※下記に詳細 - 【第6項】
不意打ち性とならない訪問販売の取引
【第1号】請求により訪問、【第2号】継続的な取引(過去1年以内に2回以上の訪問の取引があること、例えば、昔の酒屋の御用聞き…サザエさんでいうところの三河屋さん) - 【第7項】
不意打ち性とならない電話勧誘販売の取引
【第1号】請求により電話、【第2号】継続的な取引(過去1年以内に2回以上の取引(店舗購入・通販購入も含む)があること) - 【第8項・第9項・第10項】
割賦販売法との関係・省略
クーリングオフの適用に関する補足
特定商取引法である>クーリングオフが適用される取引である>クーリングオフ期間内である>クーリングオフの適用対象除外商品・役務ではない
⇒クーリングオフが適用されない場合に、取消ししたいのであれば、他の民事ルールを適用させる(例えば、不実告知による誤認など)
ちなみに「民事ルール」とは被害を救済するための取消しや解除などの制度のことで、「行政規制」は対となる言葉で、事業者への禁止事項などの規制があり、行政処分や罰則の対象となる。※禁止行為により行政処分されたからといって、もれなく被害の救済がされるというわけではなく、被害の救済は別に民事ルールを適用させる。したがって、被害救済は、同じ法律内の時もあれば別の法律の場合もあり、また重複して適用されることもある(投資被害における金融商品取引法と民法など)。
クーリングオフ適用除外の商品(特定商取引法第26条第5項)
- 特定商取引法第26条第5項の対象は「訪問販売」と「電話勧誘販売」
- 適用除外されるのは
【第1号】消耗品(使用により著しく価額が減少するもの)(政令指定)※契約書面に使用した場合はクーリングオフできないと記載がある場合のみ
【第2号】生鮮食料品等の極めて短期間で商品価値が減少するもの ※政令指定商品なし(御用聞きや3000円未満が多いため)
【第3号】3000円未満(税込)の現金取引(金額は政令指定)
【第1号】消耗品(使用により著しく価額が減少するもの)(政令指定)※契約書面に「使用した場合はクーリングオフできない」と記載がある場合のみ
特定商取引に関する法律施行令
第六条の四 法第二十六条第五項第一号の政令で定める商品は、別表第三に掲げる商品とする。
別表第三(第六条の四関係)
一 動物及び植物の加工品(一般の飲食の用に供されないものに限る。)であつて、人が摂取するもの(医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項の医薬品をいう。以下同じ。)を除く。)←健康食品のこと
二 不織布及び幅が十三センチメートル以上の織物
三 コンドーム及び生理用品
四 防虫剤、殺虫剤、防臭剤及び脱臭剤(医薬品を除く。)
五 化粧品、毛髪用剤及び石けん(医薬品を除く。)、浴用剤、合成洗剤、洗浄剤、つや出し剤、ワックス、靴クリーム並びに歯ブラシ
六 履物
七 壁紙
八 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第三十一条に規定する配置販売業者が配置した医薬品(薬事法の一部を改正する法律(平成十八年法律第六十九号)附則第十条に規定する既存配置販売業者が配置したものを含む。)
【第2号】生鮮食料品等の極めて短期間で商品価値が減少するもの ※政令指定商品なし(御用聞きや3000円未満が多いため)
- 現時点で、政令指定商品なし
【第3号】3000円未満(税込)の現金取引(金額は政令指定)
- 消費税等を含む総額が3000円
- 全額を現金払い(全額を支払っていない時はクーリングオフ対象となる)
- 取引が終わっているのに事業者の帰責理由がないクーリングオフのコストがかかることは健全性を欠く
(参考)法律 ※長い条文なので引用していません
- 特定商取引に関する法律
第五節 雑則(適用除外)第二十六条 - 特定商取引に関する法律施行令
第五条~第十条
別表第二(第五条、第五条の二関係)
(参考)適用除外に関する主な法律
- 消費者契約法
…労働契約をのぞく、すべての消費者契約(消費者と事業者との契約)が対象 ※ほぼ何でもあり - 割賦販売法
…翌月一括払い(いわゆるマンスリークリア)が対象外⇒抗弁権が主張できない⇒支払い前だったら「リボ払い」に変更することで割賦販売法の規制対象となり抗弁権を主張できるという裏技