2020年度 問題1①~④ 消費者行政と関連法(正誤○×)その2(一般公開中)

1.次の各文章が、正しければ○、誤っていれば×を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。

① 消費者基本法では、国の基本的施策として、消費者安全の確保、消費者契約の適正化、広告その他の表示の適正化、公正自由な競争の促進等が定められている。

② 消費者基本法は、消費者庁と消費者委員会の発足にあわせ、2009(平成 21)年に消費者保護基本法を抜本的に改正したものであり、消費者政策の基本理念をはじめとして、国や地方公共団体、事業者の責務を規定している。

③ 消費者基本法では、地方公共団体は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた苦情が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に処理されるようにするため、苦情の処理のあっせん等に努めなければならないと規定されている。

④ 「地方消費者行政強化作戦 2020」によれば、地方自治法上、地方消費者行政は自治事務であって、地方公共団体の自主性・自立性を尊重するため、地方消費者行政の充実・強化に関する交付金を廃止し、地方公共団体による自主財源の確保を要請している。

2020年度 問題1① 消費者基本法(第11・12・15・16条・基本的施策)BC

① 消費者基本法では、国の基本的施策として、消費者安全の確保、消費者契約の適正化、広告その他の表示の適正化、公正自由な競争の促進等が定められている。

  • 消費者基本法の国の基本的施策は、第2条の「基本理念(消費者の権利など)」を具体化するものとして、「第二章 基本的施策」として第11条から第23条まで13施策があげられています。
  • なかなか暗記できないですが、常識的に考えればおおむねわかると思います。しかし、「公正自由な競争の促進等」が少し迷うかもしれません。つまり、消費者のことではなく、事業者の競争のことをいっているので、それは消費者保護基本法の時代のものではないか?と、深読みしてしまいます。
  • しかし、消費者行政で必要なのは消費者に対する施策だけでなく、事業者に対する施策も当然必要であるので、消費者基本法だからといって規定されていないわけではありません。
  • 同じような発想で、事業者サイドの施策を問われる問題が出ることがありますが、一瞬悩んで、深呼吸して、事業者への施策も必要だなという共通認識を思い出してください。しっかり、勉強しているほど、深みにはまるかもしれませんので、間違った受験生も多いかもしれません。
  • 蛇足ですが、最後の「公正自由な競争の促進等」の「等」は第16条の条文タイトルの「等」でもあり、問題文で列挙された4項目以外の項目もあるという「等」の両方の意味にとれます。

したがって、問題1①は○(正しい文章)です。

消費者基本法

第二章 基本的施策

安全の確保
第十一条 国は、国民の消費生活における安全を確保するため、商品及び役務についての必要な基準の整備及び確保、安全を害するおそれがある商品の事業者による回収の促進、安全を害するおそれがある商品及び役務に関する情報の収集及び提供等必要な施策を講ずるものとする。

消費者契約の適正化等)
第十二条 国は、消費者と事業者との間の適正な取引を確保するため、消費者との間の契約の締結に際しての事業者による情報提供及び勧誘の適正化、公正な契約条項の確保等必要な施策を講ずるものとする。

(計量の適正化)第十三条 (省略)

(規格の適正化)第十四条 (省略)

広告その他の表示の適正化等
第十五条 国は、消費者が商品の購入若しくは使用又は役務の利用に際しその選択等を誤ることがないようにするため、商品及び役務について、品質等に関する広告その他の表示に関する制度を整備し、虚偽又は誇大な広告その他の表示を規制する等必要な施策を講ずるものとする。

公正自由な競争の促進等
第十六条 国は、商品及び役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の拡大を図るため、公正かつ自由な競争を促進するために必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、国民の消費生活において重要度の高い商品及び役務の価格等であつてその形成につき決定、認可その他の国の措置が必要とされるものについては、これらの措置を講ずるに当たり、消費者に与える影響を十分に考慮するよう努めるものとする。

(啓発活動及び教育の推進)第十七条 (省略)

(意見の反映及び透明性の確保)第十八条 (省略)

(苦情処理及び紛争解決の促進)第十九条 (省略)

(高度情報通信社会の進展への的確な対応)第二十条 (省略)

(国際的な連携の確保)第二十一条 (省略)

(環境の保全への配慮)第二十二 (省略)

(試験、検査等の施設の整備等)第二十三条 (省略)

ハンドブック消費者 8ページ 2.「消費者の権利」と基本的施策との関係

2020年度 問題1② 消費者基本法(消費者保護基本法からの改正)A ※ひっかけ

② 消費者基本法は、消費者庁と消費者委員会の発足にあわせ、2009(平成 21)年に消費者保護基本法を抜本的に改正したものであり、消費者政策の基本理念をはじめとして、国や地方公共団体、事業者の責務を規定している。

  • 簡単な引っ掛け問題ですので引っかからないように気をつけましょう。試験が開始してすぐの時間帯ですので、①も②も緊張のために正常な判断ができないかもしれませんので落ち着きましょう。
  • 「消費者基本法は、消費者保護基本法を抜本的に改正したもの」ではありますが、「消費者庁と消費者委員会の発足にあわせた2009(平成 21)年」ではなく、2004年(平成16年)6月2日になります。
  • 消費者行政の3つの大きな時間軸を思い出してください
    「①消費者保護基本法の時代」⇒「2004年(平成16年)6月2日②消費者基本法の時代」⇒「2009年(平成 21)年9月1日③消費者庁創設からの時代」
  • 「消費者庁と消費者委員会の発足にあわせた2009(平成 21)年」のフレーズを使うとしたら消費者安全法の施行ですし、消費者委員会の誕生でもあります。

したがって、問題1②は×(誤っている文章)です。

2020年度 問題1③ 消費者基本法(第19条・基本的施策・苦情処理)B ※重要基本事項

③ 消費者基本法では、地方公共団体は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた苦情が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に処理されるようにするため、苦情の処理のあっせん等に努めなければならないと規定されている。

  • 消費者保護基本法の時代にもありましたが(表現は多少異なりますが)、法改正されても、ほぼ同じ表現で残り、地方公共団体が消費生活相談業務をする根拠になっています。ちなみに努力義務です。地方自治体の消費者施策を地自体内部で説明する場合には、この根拠条文を示しています。
  • 消費者安全法が施行されてから消費生活センターが法的に位置づけられたことは非常に大きな出来事です。地方消費者行政を後押しすることになります。この2つの法律で、消費生活相談業務業務、消費生活センターについて規定されています。2次面接試験でも必要な知識になります。
  • 問題1①で出題されている基本施策13個のうちの1つになります。
  • 条文からそのまま引用されています。
  • 普通に読んでも、当たり前の話なので間違うことはないと思います。

したがって、問題1③は○(正しい文章)です。

消費者基本法

第二章 基本的施策

苦情処理及び紛争解決の促進
第十九条 地方公共団体は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた苦情が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に処理されるようにするため、苦情の処理のあつせん等に努めなければならない。この場合において、都道府県は、市町村(特別区を含む。)との連携を図りつつ、主として高度の専門性又は広域の見地への配慮を必要とする苦情の処理のあつせん等を行うものとするとともに、多様な苦情に柔軟かつ弾力的に対応するよう努めなければならない。
2 国及び都道府県は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた苦情が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に処理されるようにするため、人材の確保及び資質の向上その他の必要な施策(都道府県にあつては、前項に規定するものを除く。)を講ずるよう努めなければならない。
3 国及び都道府県は、商品及び役務に関し事業者と消費者との間に生じた紛争が専門的知見に基づいて適切かつ迅速に解決されるようにするために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

消費者保護基本法
(苦情処理体制の整備等)
第十五条
1 事業者は、消費者との間の取引に関して生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努めなければならない。
2 市町村(特別区を含む。)は、事業者と消費者との間の取引に関して生じた苦情の処理のあつせん等に努めなければならない。
3 国及び都道府県は、事業者と消費者との間の取引に関して生じた苦情が適切かつ迅速に処理されるようにするために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

2020年度 問題1④ 消費者施策(地方消費者行政強化作戦 2020・自治事務)BC ※一般常識で対応可能

④ 「地方消費者行政強化作戦 2020」によれば、地方自治法上、地方消費者行政は自治事務であって、地方公共団体の自主性・自立性を尊重するため、地方消費者行政の充実・強化に関する交付金を廃止し、地方公共団体による自主財源の確保を要請している。

  • 地方消費者行政強化作戦 2020は、第4期消費者基本計画とともに、2020年度試験対策、特に論文対策でしつこくやりましたし、動画解説もあります。
  • 地方の消費者施策の充実には国との連携は重要であり、当然、予算も措置されるというのは、普通に想像できると思います。
  • 問題文には聞きなれない言葉が並んでいますが、細かいことにとらわれず全体を見てください。
  • 「地方消費者行政強化作戦 2020」の概要版では、
    『地方の自主性・自立性が十分発揮されることに留意しつつ、地方消費者行政の充実・強化のための交付金等を通じて、地方における計画的・安定的な取組を支援』
    と書かれていますが、
    正式な本文では、
    『強化作戦2020 の推進に当たり、消費者庁は、地方消費者行政が自治事務であることを踏まえ地方公共団体の自主性・自立性が十分に発揮されることに留意するとともに、地方消費者行政の充実・強化のための交付金等を通じて地方公共団体等による消費者行政推進のための計画的・安定的な取組を支援する。』
    と書かれており、本文がほぼ問題文と同じ書き方でありつつも、誤りの問題文を作っています。
  • 地方公共団体の自主性・自立性を「尊重する」のもいいですが、それだけではなく、「十分に発揮されることに留意する」であり、「交付金を廃止」するのではなく、「交付金を通じて」支援しています。予算措置がないと、やりたいような施策の実現が難しくなりますから。

したがって、問題1④は×(誤っている文章)です。

消費者庁ホーム > 政策 > 政策一覧(消費者庁のしごと) > 地方協力 > 地方消費者行政の支援に関する業務
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/

地方消費者行政強化作戦2020本文

地方消費者行政強化作戦2020 令和2年4月1日 消費者庁

(趣旨)
第1 第4期消費者基本計画(令和2年3月31 日閣議決定)を踏まえ、どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられ、消費者の安全・安心が確保される地域体制を全国的に維持・拡充することを目指して、「地方消費者行政強化作戦」(平成27 年3月24 日付け消教地第117 号)を改定し、「地方消費者行政強化作戦2020」(以下「強化作戦2020」という。)として定める。

第2 強化作戦2020 の推進に当たり、消費者庁は、地方消費者行政が自治事務であることを踏まえ、地方公共団体の自主性・自立性が十分に発揮されることに留意するとともに、地方消費者行政の充実・強化のための交付金等を通じて、地方公共団体等による消費者行政推進のための計画的・安定的な取組を支援する。

(目標)
第3 消費者庁は、地方消費者行政の充実・強化を通じて、消費者のより豊かで安全・安心な生活を実現するため、地方消費者行政の充実・強化のための交付金等を通じた当面の政策目標として、都道府県ごとに以下の項目を達成することを目指し、地方公共団体等の取組を支援する。
(以下省略)

地方消費者行政強化作戦2020本文 [PDF:210KB]

交付金・基金について

消費者庁の創設に伴い、消費生活センターを増やし、地方消費者行政を活性化させる必要がありました。本来、地方消費者行政は自治事務であり自主財源で賄われるものですが、国が交付金を使って、迅速かつ確実な推進を目指しました。この最初の交付金が基金として、現場にさまざまな恩恵をもたらしました。

交付金について簡単にまとめたいと思います。

消費者庁ホーム > 政策 > 政策一覧(消費者庁のしごと) > 地方協力 > 地方消費者行政の支援に関する業務 > 地方消費者行政強化交付金等

https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/grant/

3段階での交付金

  1. 地方消費者行政活性化基金(平成20~25年度)(補助率: 100%)※令和2年度までの終了を目途
    ・地方消費者行政活性化交付金として都道府県に一括して交付し、各都道府県が基金としてプールして、各市町村に交付する
    ・基本的に何でもありの交付金で各種研修が多く開催された。相談員の待遇改善の人件費にも充当できた。
    ・補助率100%なので、自治体の自主財源を使う必要がなかったので予算化しやすかった。
    ・消費者行政の歴史の中で、「基金」といえば、この交付金のこと。
  2. 地方消費者行政推進交付金(平成26~29年度)(補助率: 100%)
    ・事業メニューごとに単年度交付し、徐々に自主財源化
  3. 地方消費者行政強化交付金(令和元年度~)
    ・地方消費者行政強化事業(補助率: 1/2)
    ・地方消費者行政推進事業(旧地方消費者行政推進交付金)(補助率: 定額)

補助率100%という交付金はなかなかないが、そこまでして推進したい事業。最近では補助率1/2など、通常の交付金と同じ感じになってきている。

【平成26年度 過去問 問題1】
⑧ 消費者庁は、㋐「地方消費者行政活性化交付金」を予算措置し、地方消費者行政の充実・強化をはかってきたが、㋑平成23年度をもって財政支援措置は終了した
【⑧→×イ(誤っている箇所)※財政支援は続いている】

【平成24年度 過去問 問題1】
⑨ 消費者庁では、平成21年度から23年度までを地方消費者行政の「集中育成・強化期間」として、地方消費者行政活性化基金などを通じて㋐財政的な支援を行ってきた。この間、各地域の自治体では、こうした支援措置を活用して、㋑消費生活センターおよび消費生活相談窓口の開設や充実などが進んだ
【⑨⇒〇(すべて正しい箇所)】

平成24年度(2012年度)論文試験(本試験)
1.地方消費者行政活性化基金によって地方公共団体の消費者行政の整備が進められていますが、その現状と活性化基金以降の地方消費者行政の充実・強化の課題について、下記の指定語句をすべて使用して論じなさい。なお、文章中の指定語句の箇所には、わかるように必ず下線を引きなさい。
指定語句:相談体制の整備、 連携強化、 自治事務、 国の支援、地域間格差

【正答】
①→〇、②→×、③→〇、④→×