【質問・回答】消費生活相談員の資格取得後に相談員として就職するための準備学習
質問
資格を取ったら、次のステップとして、相談員として相談ができる知識を身につけたいと思っております。
時間をかけて、基本から体系的に学習したいと思っておりますが、どのような学習方法で、どのようなテキスト、参考書等使用したら良いのでしょうか?
回答
相談員の仕事は、実践から学ぶことがほとんどです。というのも、実際の相談は教科書にあるようなマニュアルとは全く異なるからです。
といっても、最低限知っておく必要のある法律知識については事前に復習して確認しておいた方がいいかもしれません。
消費生活相談員に求められている能力は、大きく「知識」と「技術」です(下記資料参照)。
例えば、相談現場では、「即答できるか」「調べながら対応するか」「誰かに聞くか」「いったん電話をおくか」「折り返し電話にするか」は、個人の法律の基礎知識を前提とした経験によるところが大きいです。こればかりは失敗を重ねつつ、学びながら経験していくしかないです。
就職したときに、研修をしてくれるところもありますが、1人相談員の職場等では、いきなり、相談業務に入ってくださいと言われることもあります。1人職場では質問や相談できる人がいなくて、大変な思いをしている新人相談員も少なくありません。
大きな消費生活センターでは、啓発担当の採用として、最初に啓発の仕事をして、順番に仕事を覚えて、相談員採用に備えるというところもあります。
資格を持っているということは、相談業務にかかわる法律の基礎知識はすでに持っているということが前提となります。
知識のほかに、聴き取り能力・コミュニケーション能力・あっせん能力などの技術について、持っている能力を実践で使っていくことになりますので、経験がものを言います。。
また、相談員は、雇止め問題や、ワーキングプア問題、感情労働によるメンタル不調など、結構しんどい職業ですので、相談員に向いていない人もいるかもしれないということも心にとめておいてください。
相談員になった場合に必要となる能力や事前準備学習などの参考情報を紹介します
勉強部屋では現職相談員や卒業会員向けのコンテンツを提供していま
- 勉強部屋で受験した過去問や今後の試験等から学ぶ
- 勉強部屋の卒業会員向けのコンテンツの提供(実務に活かせる記事、実際のトラブル事例解説、実務につくための研修講座)
- 相談実務スキルアップオンライン勉強会(おおむね毎月開催・卒業会員のみアーカイブ配信あり)
- 消費生活相談スキルアップ講座の過去記事(一部勉強部屋にも転載)のリライト
相談員になった場合に必要となる能力や事前準備学習などの参考情報
1.【知識】法律の知識(基本と応用)
- 基礎的な法律知識は持っていることが前提
- 逐条解説で学ぶ(特定商取引法)※とにかく特定商取引法が最優先
- 消費者庁の法律解説・法律改正の資料で学ぶ
- WEB版国民生活・消費者庁の公表資料で学ぶ
- 「公益社団法人 全国消費生活相談員協会(全相協)」相談員協会の受験対策テキスト「消費者問題入門」※試験に出ないところも多いので試験対策としては細かすぎて難しいのですが、相談現場で使うことを目的としているので、全体像が網羅されています。必要かどうかといったら、法律改正等もあるので、必要ないかなと思います(買うほどではないので職場にあれば参考に)。
登録試験機関の消費生活相談員資格試験の試験業務に関するガイドライン[PDF:208KB](3-4ページ)
(2)消費生活相談員に求められる知識及び技術
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/system_improvement/consumer_safety_act_amendment/
ア.消費生活相談を行うために必要な知識
①商品・役務
・商品等及び役務の特性、使用等の形態その他の商品等及び役務の消費安全
性に関する知識
・商品等及び役務並びに生活に関する知識
②消費者行政
・消費者行政に関する法令に関する知識
・消費者問題の動向等についての知識
・消費者行政についての知識
③関連分野
・福祉などの関連分野や行政一般に関する知識
・経済等に関する知識
・家計管理等に関する知識
2.実践から学ぶOJT
- WEB版国民生活の実際の相談対応の記事を読んで疑似体験をする
- 2次試験(面接試験)での事例問題が、まさしく実践例です
3.相談員の心構え
- 「消費生活相談スキルアップ講座」にも多くの過去記事あり
4.【技術】コミュニケーションスキル等の能力
登録試験機関の消費生活相談員資格試験の試験業務に関するガイドライン[PDF:208KB](3-4ページ)
(2)消費生活相談員に求められる知識及び技術
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/system_improvement/consumer_safety_act_amendment/
イ.消費生活相談を行うために必要な技術
・消費生活相談の実務に関する技術(ヒアリング力、コミュニケーションスキル、交渉力)
・文章作成力
・関係部局等に対する問題提起をする能力
・法令を事案解決のために活用する能力
5.PIO-NET入力
- パソコンの操作に慣れておく
- 相談対応を簡潔にまとめて、分かりやすく入力できるようにする(論文試験の目的の1つ)
6.国民生活センター・自治体等の研修参加
- 消費生活センター・相談窓口の規模や相談員の数などにより、自ら敵的に研修をしていたり、頻繁に外部研修に参加させてもらえるところもあれば、何もないところもある。(強化作戦の研修参加率100%目標)
- 最近は、オンラインで研修できるような環境も整い始めている
7.最新の消費者問題の継続的な学習
- ニュース等の情報にアンテナを張っておく
- WEB版国民生活・消費者情報などの雑誌、消費者庁・国民生活センター等の公開情報等を常にチェックしておく
8.消費生活アドバイザー・TES資格への挑戦
- 相談員には消費生活アドバイザーとのダブル資格を所有している人も結構います。来年度に受験してみることも(ちなみに管理人は22年度受験でに日程の関係でダブル受験できなかったので翌年に受験して合格しています)
- 難関資格TES(繊維製品品質管理士)の受験を目指す ※クリーニング等衣料品の専門資格で難関(大きなセンターだと1-2人保有しているかも。組織別リスト公表済み)。クリーニング・衣料品の苦情相談・商品テストに大いに活用できる。管理人は全5科目合格するのに持ち越し可能な3年ぎりぎりで合格しました(1科目が3年かかった)。衣料品関係の一般企業でも価値のある資格です。
(参考)消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会 中間報告(平成24年8月)
- 消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会 中間報告 [PDF:643KB]
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10963421/www.caa.go.jp/region/pdf/120827_houkoku.pdf
【17-19ページ】
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10963421/www.caa.go.jp/region/index8.html
5.相談員資格における必要な知識・技能の担保
消費生活相談は、相談者に対して適切な助言・適切な情報提供を行うとともに、消費者と事業者との間で生じた消費者トラブルの解決を図り、さらには、関係機関との連携等により消費者被害の拡大防止・未然防止にまでつなげていくものである。
(1) 消費生活相談員に求められる知識とその担保
【消費者問題に関する法律知識】
消費生活相談員には、消費者と事業者との間のトラブルの解決に当たって、消費者問題に関する幅広い法律知識が求められる。また、法律そのものの知識だけでなく、立法の趣旨・理念や課題についても十分に理解した上で、適切な助言やあっせんにより消費者トラブルを適切に解決に導くことが求められる。
【商品・サービスや生活に関する知識】
また、消費生活相談員は、こうした消費者トラブルを解決するとともに、商品・サービスの内容や生活に関する相談に対応する必要があるため、消費者問題に関する法律知識とあわせて、商品・サービスや消費生活に関する幅広い知識を持つこと、及び消費者問題の背景にある社会経済状況の変化や取引や決済等の国際化の状況を把握することが求められる。
【関連分野や家計管理等に関する知識】
さらに、多重債務問題などの相談については、相談者の生活再建にまで繋げていくことも重要な役割であり、このためには、生活支援のための貸付制度等の福祉制度を始めとする関連分野に関する知識が必要となるとともに、生活再建に向けたアドバイス等のための家計管理や債務整理に関する基礎知識等も求められる。
【行政法規や行政組織等に関する知識】
また、受けた相談をもとに関係機関と調整して、事業者指導や法執行に繋げ、被害の再発防止・拡大防止に結びつけるためには、個別業法などの行政法規に関する知識が求められるとともに、行政においてどの部署がどのような業務を行っているか、意思決定はどのように行われるかといった行政組織に関する知識等も必要となる。
このように、消費生活相談を行う上で、消費生活相談員には、消費者問題に関する法律知識、商品・サービスや生活に関する知識、さらには、福祉などの関連分野や、行政一般に関する知識も求められる。
(2)消費生活相談員に求められる技能とその担保
【ヒアリング力】
消費生活相談においては、不安を抱えて相談にくる相談者の話に真摯に耳を傾け、話を上手に引き出すとともに、問題点を的確に整理し、相談内容を十分に聴き取ることが求められる。また、あっせんを適切に行うためには、相談内容だけでなく、相談者の属性やおかれている状況、相談の背景となっている事情についても把握することが必要となる。
【コミュニケーションスキル・交渉力】
また、あっせんにおいては、相談内容を的確に分析し、それを基に事業者の様々な問題点等を指摘し、事業者との間で粘り強く交渉を重ねる高い交渉力も不可欠である。さらに、場合によっては、過大な要求をする消費者に対して説得して紛争解決に努めるといったことも必要となる。このため、消費生活相談員には、相談者に対して適切に対応するためのコミュニケーションスキルや事業者との間で粘り強く交渉にあたる力が求められる。
【法令を活用する技能】
さらに、消費生活相談員は、受けた相談の内容に応じて適切な解決を図る必要があり、そのためには、単に法律知識を知っているだけでなく、法令の趣旨や理念も十分に踏まえて、消費者トラブル解決のために法令を活用する技能が求められる。
【文章作成力】
また、消費生活相談員が相談で得た情報については、他の消費生活相談員との間で共有し、全体としての相談対応力の向上に繋げるとともに、事業者に対する指導等により消費者被害の拡大防止・未然防止に結び付けることが必要である。そのため、消費生活相談員は、相談内容や処理結果等を的確に文章にして、他の消費生活相談員や消費生活センターと共有するためにPIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に入力したり、法執行や事業者指導等を行う部局に情報提供することが必要である。
【関係部局等に対する積極的な問題提起】
さらに、消費生活相談員は、情報を提供するだけでなく、消費者被害の拡大防止・未然防止に向けて関係部局と連携・調整する必要がある場合や、消費者被害の防止・救済のための法令や制度等に問題点がある場合には、積極的に問題提起していくことが求められる。
このように、消費生活相談を行う上で、消費生活相談員には、知識はもとより、コミュニケーションスキル、ヒアリング力、交渉力、法律の活用力、文章作成力などの実践的な技能も求められることから、資格制度においては、試験内容にこうした技能を問う問題や実務に即した問題を取り入れたり、これらの技能を担保する仕組とすることが必要である。