2019年度(本試験) 問題1①~④ 消費者行政と関連法(正誤○×)その2(一般公開中)

1. 次の各文章が、正しければ○、誤っていれば×を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。

① 消費者基本法は、事業者の責務等を規定している。例えば、消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供することとしており、個別具体的に情報提供の法的義務を定めている。

② 消費者基本法では、消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、必要な情報を収集するなど、自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならないと規定されている。

③ 消費者基本法は、消費者の権利の尊重と消費者の自立の支援を消費者政策の基本理念としており、消費者政策の推進にあたり、高度情報通信社会の進展への的確な対応、国際的な連携の確保、環境保全への配慮を求めている。

④ 地方公共団体における消費者行政に係る事務は、基本的に地方自治法上の自治事務として位置づけられている。

2019年度(本試験) 問題1① 消費者基本法(第5条・事業者の責務)A

① 消費者基本法は、事業者の責務等を規定している。例えば、消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供することとしており、個別具体的に情報提供の法的義務を定めている。

  • 消費者基本法の条文の基本部分からの出題です。事業者の責務で「消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること」というところは条文を知らなくても常識的に正解だと思いますが、その次が部分が正解かどうかの判断ですね。
  • 「個別具体的に情報提供の法的義務を定めている」ですが、個別に具体的な事項を書きだすことも多種多様で難しいですし、なおかつ、それを「義務」とまで言い切るのは違和感があります。
  • 大きな範囲では「義務」として、細かいところまでは定めていないというのが条文の基本です。
  • そのときに「義務」となるのか「努力義務」となるのかがよく出題されます。
    義務…~しなければならない。
    努力義務…~するように努めなければならない
  • 今回の問題では、事業者には義務がありますよ⇒個別具体的には条文のように5つの個別の義務があるよ、という感じです。
  • 条文の基本からの出題は多いので、下記の条文をしっかり読んで(口に出して呟いて)確認しておいてください。なんとなく記憶に残しておいてください。
  • 今回の常識ポイントは「個別具体的に情報提供の法的義務を定めている」という文章なんて見たことないし、違和感があるなあと感じるところです。
  • あえていうなら、個別の情報提供は、それぞれの法律で定められているところですね。例えば、訪問販売なら特定商取引法で、携帯電話の契約なら電気通信事業法で、という感じです。

したがって、問題1①は×(誤っている文章)です。

(事業者の責務等)
第五条 事業者は、第二条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にかんがみ、その供給する商品及び役務について、次に掲げる責務を有する。
一 消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること。
二 消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
三 消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること。
四 消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理すること。
五 国又は地方公共団体が実施する消費者政策に協力すること。
2 事業者は、その供給する商品及び役務に関し環境の保全に配慮するとともに、当該商品及び役務について品質等を向上させ、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成すること等により消費者の信頼を確保するよう努めなければならない。

2019年度(本試験) 問題1② 消費者基本法(第7条・消費者の責務)A

② 消費者基本法では、消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、必要な情報を収集するなど、自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならないと規定されている。

  • 消費者の責務は第7条に2項目定められています。そのうちの第1項の条文そのままです。条文を覚えていなくても、読んで正解だと分かると思います。

したがって、問題1②は○(正しい文章)です。

第七条 消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならない。
2 消費者は、消費生活に関し、環境の保全及び知的財産権等の適正な保護に配慮するよう努めなければならない。

2019年度(本試験) 問題1③ 消費者基本法(第1条 目的・第2条 基本理念)B

③ 消費者基本法は、消費者の権利の尊重と消費者の自立の支援を消費者政策の基本理念としており、消費者政策の推進にあたり、高度情報通信社会の進展への的確な対応、国際的な連携の確保、環境保全への配慮を求めている。

  • 「消費者の権利の尊重と消費者の自立の支援」が「消費者政策の基本理念」というのはわかると思いますが、具体的な「消費者政策の推進」についてあげられている項目が正しいかどうかを判断する問題となっています。
  • 「消費者政策の推進」として3項目あげられているのですが、条文そのままです。覚えていなかったとしても、一般常識で正解の可能性の方が高いと推測されます。

したがって、問題1③は○(正しい文章)です。

なお、この問題の応用で「消費者の自立の支援に当たつては」という第2項も要チェックですので確認しておいてください。

(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務等を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進を図り、もつて国民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的とする。
(基本理念)
第二条 消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者政策」という。)の推進は、国民の消費生活における基本的な需要が満たされ、その健全な生活環境が確保される中で、消費者の安全が確保され、商品及び役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映され、並びに消費者に被害が生じた場合には適切かつ迅速に救済されることが消費者の権利であることを尊重するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として行われなければならない。
2 消費者の自立の支援に当たつては、消費者の安全の確保等に関して事業者による適正な事業活動の確保が図られるとともに、消費者の年齢その他の特性に配慮されなければならない。
3 消費者政策の推進は高度情報通信社会の進展に的確に対応することに配慮して行われなければならない。
4 消費者政策の推進は、消費生活における国際化の進展にかんがみ、国際的な連携を確保しつつ行われなければならない。
5 消費者政策の推進は環境の保全に配慮して行われなければならない。

2019年度(本試験) 問題1④ 自治事務 BC ※24年度論文試験指定語句

④ 地方公共団体における消費者行政に係る事務は、基本的に地方自治法上の自治事務として位置づけられている。

  • みなさま、この問題自体の意味が分かりますか?「自治事務」って何?というところでしょう。
  • 過去問を勉強している方は気が付いたかもしれません。平成24年度の論文試験問題の指定語句として出題されています。

1.地方消費者行政活性化基金によって地方公共団体の消費者行政の整備が進 められていますが、その現状と活性化基金以降の地方消費者行政の充実・強化 の課題について、下記の指定語句をすべて使用して論じなさい。なお、文章中 の指定語句の箇所には、わかるように必ず下線を引きなさい。
指定語句:相談体制の整備、 連携強化、 自治事務、 国の支援、地域間格差

その時の解説が下記のとおりです

◆法定受託事務=国が行う事務を地方自治体に委任している事務で、国の関与があり、自由にできない
◆自治事務=法定受託事務を除いた事務のことで、地方がその責任において自由に施策を行うことができる⇒自治体により力の入れ具合が違う

  • 消費者行政は、ある程度は国からの予算が出るのですが、基本的には各自治体の実情に合わせて施策を決めていく仕事になりますので、そういう仕事を「自治事務」といいます。
  • 例えば、食品衛生法での飲食店の許認可業務など、食品衛生行政は法定受託事務となって、国が各自治体に事務を委任しています。
  • では、すべて自治事務かといえば、「基本的に」と書いてある通り、そうではなく、消費者安全法に法定受託事務があるのです。これを決めるときは、結構大変でした。全国で説明会があり、各自治体でも予算措置や事務の振り分けなどが必要だったからです。
  • それは何かというと、下記の条文委もあるように、消費者安全法第45条第1項の事務で、「国が調査対象となる事業者へ、報告を求めたり、立ち入り調査をしたいのだけど、それを自治体に代わりにやってもらう」という事務です。発端が自治体であれば問題ないのですが、国が探知して国が調査が必要と決めたときに、いちいち国の職員が自治体に行って仕事をやってられませんよね。そういう事務を地方自治体にやってもらう「法定受託事務」といいます。
  • 予算が厳しい中、自治事務である消費者行政の多くは消費者庁創設時には盛り上がったのですが、悪質商法がはびこっていながらも縮小傾向にあります。
  • 他に例を挙げると、私が採用された平成4年に保健所では「住民健診」という行政サービスを行っていました。区内何か所かにレントゲン車などと一緒に採血などを無料で行っていました。それは住民サービスで自治事務でしたが、その必要性が問われ今ではやっておりません。法定受託事務だったらなくなることはないのですが。
  • これで、「自治事務」と「法定受託事務」の違いが何となく理解できましたか?

したがって、問題1④は○(正しい文章)です。

一般受験生の多くは(現職相談員もそうですが)「自治事務」は知らないと思います。こういう誰も知らなさそうな問題は「正解」であることが多いです。こういう問題を私は「研修問題」と考えていて、相談員なら知っておきなさいという意味だと考えています。同様に、法律改正事項等も正解のことが多いですね。

消費者安全法

第七章 雑則
(財政上の措置等)
第四十六条 国及び地方公共団体は、消費者安全の確保に関する施策を実施するために必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
(権限の委任)
第四十七条 内閣総理大臣は、第四十五条第一項の規定による権限その他この法律の規定による権限(政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任する。
2 前項の規定により消費者庁長官に委任された第四十五条第一項の規定による権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事又は消費生活センターを置く市町村の長が行うこととすることができる。
(事務の区分)
第四十八条 前条第二項の規定により地方公共団体が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする

(報告、立入調査等)
第四十五条 内閣総理大臣は、この法律の施行に必要な限度において、事業者に対し、必要な報告を求め、その職員に、当該事業者の事務所、事業所その他その事業を行う場所に立ち入り、必要な調査若しくは質問をさせ、又は調査に必要な限度において当該事業者の供給する物品を集取させることができる。ただし、物品を集取させるときは、時価によってその対価を支払わなければならない。
2 第十一条の二十四第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

【正答】
①→×、②→〇、③→〇、④→〇