発症の時期と時効の起算点

  • 【平成20年7月30日を訴訟を提起】A…昭和62年12月に発症、抗ウイルス治療によって、平成12年頃までに鎮静化⇒平成19年12月頃再発
  • 【平成24年2月29日に訴訟を提起】B…平成3年1月に発症、抗ウイルス治療によって、平成12年頃までに鎮静化⇒平成16年3月頃再発
  • 両事例とも、発症からは20年を経過しているが、再発からは20年を経過していない
  • 民法では不法行為(発症した時)から20年が時効となっている
  • 20年の起算点が、発症時か再発時かで争われたが、高裁判決は発症時で時効(除斥期間)が過ぎているとしたが、最高裁では再発時が起算点として時効にはなっていないとして高裁に差し戻した(差し戻しになったので、最終的に確定はしていない)

裁判には関係ないが時効の勉強(除斥期間と消滅時効)

今回の裁判は起算点が争点なので関係ないですが、旧民法では20年の時効は除斥期間(停止や延長することはない)と考えられてきたため、きっかり20年で時効が完成して損害賠償請求権が消滅する。改正後民法では時効として位置づけられたため、完成猶予や更新により、20年の延期の余地があると考えられる。

民法関連条文(724条第2項・不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)

民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

民法(令和2年4月1日施行の改正後民法)

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条の二 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

最高裁判例

令和1(受)1287

事件名  損害賠償請求事件

裁判年月日  令和3年4月26日

法廷名  最高裁判所第二小法廷

裁判種別  判決

結果  破棄差戻

原審裁判所名  福岡高等裁判所

原審事件番号  平成30(ネ)167

原審裁判年月日  平成31年4月15日

判示事項

 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しHBe抗原陽性慢性肝炎の発症,鎮静化の後にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害につき,HBe抗原陽性慢性肝炎の発症の時ではなく,HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例

裁判要旨

参照法条

全文
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/269/090269_hanrei.pdf

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=90269

判決文より抜粋引用(判例の裁判要旨がまだ出ていないため)

上告人らがHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害については,HBe抗原陽性慢性肝炎の発症の時ではなく,HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となるというべきである。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=90269

【TBS】B型肝炎訴訟・賠償請求権の起算は「再発時」 最高裁•2021/04/26

【ANN】再発B型肝炎訴訟 最高裁「請求権消滅していない」(2021年4月26日)•2021/04/27

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