大学に入学しなかった時の入学金・授業料の返還について(消費者契約法・不当条項・最高裁判例)

「入学金は返還されない・授業料は返還される」が最高裁判例によりスタンダードに

消費者契約法の不当条項での最高裁判例の問題は頻出で、4/1より前に入学辞退したときは、入学金は大学に入学する権利として返還の必要はなく、授業料は全額返還するというのが今はスタンダードな解釈になっています。※最高裁判例の解説は下記の方にあります

【TBS NEWS】“入学しない大学の入学金は払いたくない” 大学生らが会見•2021/04/29

今回、入学金の納入期限を3月末にしてほしいという大学生の活動が報道されました。

  • 大学に対しては、入学金の支払期限を3月末にする
  • 国に対しては、入学しない大学には入学金を払わなくてもいいように

今のルールでは実現が難しいかもしれませんが、新型コロナウイルスによる金銭的な理由から、何らかの臨時的な対策が打ち出されるかもしれませんし、もしかすると最高裁判例を超える新しいルールができるかもしれません。

ただ、盛り上がらなければ単なる活動に終わってしまいます。例えば、国会で取り上げられるとか、文科省等の国が動くかにもよります。

こういう時は、陳情などにより議員を味方につけるとか、鶴の一声が効くような大物をバックにつけるとか、そういう政治的なからみがあると前進するかもしれません。

また、SNS等で炎上すれば国会でも取り上げられるかもしれません。

実際は、この4月入学が終わったし、来春にはコロナも収束している可能性もあるし、活動しているのが当事者ではないというのもあるので、フェイドアウトする可能性が高いような気はしますが、注目しておきたいと思います。

何らかの進展があれば、2次試験(面接試験)で話題になる可能性もあります。

ニュースのリンクを掲載しておきます(一定期間経過後に削除される可能性もあります→リンク切れ)

【参考】大学の入学金・授業料の返還請求に関する解説記事

国民生活センターHP
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誌上法学講座 バックナンバーWEB版国民生活
2018年9月号(No.74)
【新時代の消費者契約法を学ぶ】 第12回 不当条項規制(9条)(1)[PDF形式](181KB)
【執筆者】宮下 修一(中央大学法科大学院教授)
消費者契約法9条1号で定められる不当条項規制について、「平均的な損害」とは何かを中心に、裁判例を基に解説します。

http://www.kokusen.go.jp/wko/data/bn-hhkouza.html

【大学の入学金授業料返還訴訟】最高裁判例

事件番号  平成17(受)1158

事件名  不当利得返還請求事件

裁判年月日  平成18年11月27日

判示事項
 8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に関する消費者契約法9条1号所定の平均的な損害等の主張立証責任

裁判要旨
8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約に納付済みの授業料等を返還しない旨の特約がある場合,消費者契約法9条1号所定の平均的な損害及びこれを超える部分については,事実上の推定が働く余地があるとしても,基本的には当該特約の全部又は一部の無効を主張する当該合格者において主張立証責任を負う。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
  • 平均的損害額は超頻出で、入学金訴訟でよく出てきます。納付済みの入学金と授業料を入学辞退したときの返還訴訟です。大学の入学金は大学へ入学できる権利としての性質なので返還できないけど、授業料は授業開始前なので大學側に損害が出ていないので返還するというものです。

【2016年度 問題14③2択 平均的損害額(第9条)BC】
③ 消費者契約法第9条では、キャンセル料など契約の解除に伴う損害賠償額を予定する条項等について、㋐当該事業者に生ずべき平均的損害を超える部分を無効としている。㋑最高裁判決においては、当該事業者に生ずべき平均的損害を立証する責任は事業者にあると解されている
【正答 ③→×イ(誤っている箇所)※立証責任は事業者ではなく消費者】

  • 【⑤入学金】2016年度 問題14⑦3択 入学金返還訴訟(第9条)B

【2016年度 問題14⑦3択 入学金返還訴訟(第9条)B】
⑦ 最高裁判決は、大学の入学辞退者が納入した学納金の不返還特約について、㋐入学金は大学に入学し得る地位などの対価であるとして返還を認めなかったが、授業料の不返還特約については、㋑在学契約の解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めの性質を有するとして、㋒消費者契約法第9条第1号の適用を認めた
【正答 ⑦→〇(すべて正しい箇所)】

事件番号
 平成17(受)1158

事件名
 不当利得返還請求事件

裁判年月日
 平成18年11月27日

判示事項

1 大学と当該大学の学生との間の在学契約の性質
2 大学の入学試験の合格者が納付する入学金の性質
3 大学と在学契約等を締結した者が当該在学契約等を任意に解除することの可否
4 大学の入学試験の合格者による書面によらない在学契約の解除の意思表示の効力
5 大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約等を締結して当該大学に入学金を納付した後に同契約等が解除された場合等における当該大学の入学金返還義務の有無
6 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約の性質
7 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約等の消費者契約該当性
8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に関する消費者契約法9条1号所定の平均的な損害等の主張立証責任
9 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果

10 専願等を出願資格とする大学の推薦入学試験等の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約に対する消費者契約法9条1号の適用の効果

裁判要旨

5 大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約又はその予約を締結して当該大学に入学し得る地位を取得するための対価としての性質を有する入学金を納付した後に,同契約又はその予約が解除され,あるいは失効しても,当該大学は当該合格者に入学金を返還する義務を負わない
8 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約に納付済みの授業料等を返還しない旨の特約がある場合,消費者契約法9条1号所定の平均的な損害及びこれを超える部分については,事実上の推定が働く余地があるとしても,基本的には当該特約の全部又は一部の無効を主張する当該合格者において主張立証責任を負う
9 大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は,国立大学及び公立大学の後期日程入学試験の合格者の発表が例年3月24日ころまでに行われ,そのころまでには私立大学の正規合格者の発表もほぼ終了し,補欠合格者の発表もほとんどが3月下旬までに行われているという実情の下においては,同契約の解除の意思表示が大学の入学年度が始まる4月1日の前日である3月31日までにされた場合には,原則として,当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして,同号によりすべて無効となり,同契約の解除の意思表示が同日よりも後にされた場合には,原則として,上記授業料等が初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り,上記平均的な損害を超える部分は存しないものとして,すべて有効となる。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=33837